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スルピリド

「統合失調症」「うつ病・うつ状態」「胃・十二指腸潰瘍」に対して保険適応が認められており、日本では、ドグマチール、アビリット、スルピリドなどの名称で処方されています。「スルピリドに対して過敏症の既往歴のある患者」「プロラクチン分泌性の下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)の患者」「褐色細胞腫の疑いのある患者」では禁忌です。中等量から高用量で抗精神病薬、少量で抗うつ薬、内科では胃薬と、さまざまな場面で用いられるちょっと変わったお薬という印象を持っています。

 

日本では、ドグマチール、アビリット、スルピリドなどの名称で処方されています。

保険適応(日本)

「胃・十二指腸潰瘍」「統合失調症」「うつ病・うつ状態」に対して認められています。

→添付文書(ドグマチール

 

禁忌(日本)

・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

・プロラクチン分泌性の下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)の患者

・褐色細胞腫の疑いのある患者

 

歴史

ドグマチールは、フランスにて開発されました。日本では1973年に「胃・十二指腸潰瘍」の治療薬として承認され、1979年に「統合失調症」「うつ病・うつ状態」に適応が拡大されました。

 

作用メカニズム

代表的なベンザミド系抗精神病薬でありD2受容体、D3受容体を遮断しますが、それ以外の受容体にはほとんど作用しません。鎮静作用は弱い薬剤です。

 

<統合失調症の治療薬として>

脳内のドーパミン受容体を遮断します。ドーパミン過剰状態が幻覚や妄想などの症状(精神病症状)の原因ですが、中等量から大量のスルピリドはドーパミンの機能を抑制するため、症状を軽減することができます。

 

<うつ病の治療薬として>

スルピリドを少量のみで用いた場合、ドーパミン分泌にブレーキを掛けるシステム(シナプス前ドーパミン自己受容体)のみを抑制するため、逆にドーパミン分泌が増加します。うつ病では脳内のドーパミン活性が下がっているため、ドーパミン分泌を増やしたいのですが、そのためには「少量のスルピリド」である必要があります。抗うつ効果が現れないからといって安易に増量すれば逆効果となるため注意が必要です。薬物療法に精通した精神科医にご相談ください。

 

<胃・十二指腸潰瘍の治療薬として>

胃粘膜血流改善作用による抗潰瘍作用と末梢 D2 受容体遮断による消化管運動促進作用が、主な作用メカニズムです。(詳細は割愛させていただきます。)

 

海外での使用状況

抗うつ薬としての使用が認められているのは、日本と欧州の一部の国に限られますが、統合失調症については、欧州やアジアの多くの国・地域で治療薬として承認されています。アメリカで用いられていないため、エビデンスとなる参考データに乏しい印象がありますが、イギリスでは統合失調症の治療薬として重用されています。

 

副作用

5%以上でみられる副作用はありません。0.1~5%未満で、血圧下降、パーキンソン症候群(振戦,筋強剛,流涎等),ジスキネジア(舌のもつれ,言語障害,頸筋捻転,眼球回転,注視痙攣,嚥下困難等),アカシジア(静坐不能)、乳汁分泌,女性化乳房,月経異常,射

精不能、睡眠障害,不穏,焦燥感,眠気,頭痛,頭重,めまい,浮遊感,興奮,躁転,躁状態,しびれ,運動失調、悪心,嘔吐,口渇,便秘,食欲不振,腹部不快感、AST,ALT,Al-P 等の上昇、発疹、体重増加,浮腫,脱力感,倦怠感,排尿困難,性欲減退などが報告されています。とはいえ、筆者が20年以上診療をしている中で、一度も経験がないものが上記の半分以上を占めており、実際にみられる副作用はそれほど多くないとの印象を持っています。

 

妊婦・産婦・授乳婦への投与

添付文書には、「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」「授乳中の婦人への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合は授乳を避けさせること」と説明されています。

 

服用後の体内での動き(薬物動態)

服用後の血中濃度は、およそ2.5時間程度でピークに達します。肝臓で代謝され、胆汁を経て消化管もしくは尿中から排泄されます。血中濃度は6~8時間で半減します。

 

他のお薬との相互作用

ドーパミン抑制作用をもつ他の薬剤(例:メトクロプラミド、チアプリド、クロルプロマジン、ハロペリドールなど)と併用すると、パーキンソン症候群などが出現しやすくなります。アルコールとの併用は中枢神経抑制作用が増強するため、避けなければなりません。また、QT延長を起こしうる薬剤(例:イミプラミン、ピモジドなど)との併用は、不整脈につながることもあり、併用には注意が必要です。

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