メニュー

第一世代抗精神病薬(ブチロフェノン系)

幻覚や妄想を抑えたり、興奮を鎮める作用を持つお薬です。代表的なブチロフェノン系抗精神病薬であるハロペリドールは今も中心的な役割を担っています。抗精神病薬全体の中では、パーキンソン症候群(振戦、筋固縮、嚥下障害)アカシジア、不眠、焦燥感、神経過敏の副作用がやや多いことに注意が必要です。

 

日本で使用可能なブチロフェノン系抗精神病薬は以下のとおりです。

 

ハロペリドール内服(セレネース、ハロペリドール

ハロペリドール注射(ハロマンス、ネオペリドール

ブロムペリドール(インプロメン、ブロムペリドール

ピパンペロン(プロピタン

スピペロン(スピロピタン

チミペロン(トロペロン

 

※ (  )内は商品名です。クリックすると医療用医薬品の添付文書情報が開きます。

 

保険適応(日本)

主に統合失調症に対して保険適応が認められていますが、ハロペリドールやチミペロン(注射)は躁病に対しても承認されています。

 

禁忌

昏睡状態、循環虚脱状態、中枢神経系抑制薬の強い影響下にある場合、重症の心不全、パーキンソン病、ブチロフェノン系への過敏症、妊婦などが禁忌です。アドレナリン(ボスミン)は併用禁忌です。なお、ハロマンス(ハロペリドール持続効果注射剤)ではクロザピンとの併用も不可です。詳しくは、それぞれのお薬の添付文書をご参照ください。

 

歴史

フェノチアジン系抗精神病薬であるクロルプロマジンが登場して数年後、たくさんの抗精神病薬が合成されました。ハロペリドールもその一つであり、1958年、ベルギーのヤンセン社にて合成されました。ヨーロッパ各地の施設で臨床試験が行われ、精神運動興奮、幻覚、妄想、躁状態、攻撃性、不安、チック、不眠、せん妄、悪心・嘔吐など、さまざまな症状を軽減することが確認されました。日本でも1964以降、治療に用いられています。

 

作用メカニズム

中脳辺縁系のドーパミン受容体(D2受容体)を強力に阻害して幻覚・妄想を抑えます。ドーパミン受容体を抑制する力が強い分、副作用のパーキンソン症候群(振戦、筋強剛)がみられやすい点は否めません。抗コリン作用(口渇・便秘)、抗ヒスタミン作用(眠気)、抗アドレナリン作用(起立性低血圧)は弱く、それに付随する副作用は比較的少ないのですが、中脳皮質系のドーパミン活性を抑制することで認知機能を低下させやすい点は、フェノチアジン系と同様、第一世代抗精神病薬の弱点といえます。

 

海外における治療薬としての使用(ハロペリドール)

 

たとえば、アメリカやイギリスでは以下の治療に対する治療薬として認可されています。

 

アメリカ

・統合失調症および精神病症状

・トゥレット症候群

 

イギリス(成人)

・統合失調症および統合失調感情障害の治療。

・非薬理学的治療が失敗した場合のせん妄の急性治療。

・双極I型障害に関連する中等度から重度の躁病エピソードの治療。

・精神病性障害または双極I型障害の躁病エピソードに関連する急性精神運動性激越の治療。

・中等度から重度のアルツハイマー型認知症および血管性認知症の患者で、非薬理学的治療が奏効せず、自己または他者に危害を加えるリスクがある場合の持続的な攻撃性および精神病症状の治療。

・教育的、心理的およびその他の薬理学的治療が奏効しない、重度の障害を伴う患者のトゥレット症候群などチック症の治療。

・ハンチントン病における軽度から中等度の舞踏病の治療。他の医薬品が効果がないか、許容されない場合。

 

イギリス(小児)
  • 他の薬理学的治療が奏効しない、または許容されない13〜17歳の統合失調症。
  • 他の治療法が失敗したか、許容されない場合の、自閉症または広汎性発達障害のある6〜17歳の子供および青年における持続的で重度の攻撃性。
  • 教育的、心理的およびその他の薬理学的治療が失敗した後、重度の障害を伴う10〜17歳の子供および青年におけるトゥレット症候群を含むチック症。

 

主な副作用(ハロペリドール、国内)

5%以上の頻度でみられる副作用は、錐体外路症状(振戦、筋強剛、流涎、寡動、歩行障害、仮面様顔貌、嚥下障害など)アカシジア(静座不能)、不眠、焦燥感、神経過敏です。

 

副作用(ハロペリドール、英国のデータ)

10%以上の頻度で認められた副作用は、錐体外路症状、運動亢進、頭痛、焦燥、不眠です。

 

妊婦・産婦・授乳婦への投与

ハロペリドールとブロムペリドールは、妊婦または妊娠している可能性のある婦人に対しては「禁忌」です。ピパンペロン・スピペロンは「妊婦、妊娠している可能性のある婦人又は授乳婦には投与しないことが望ましい」(医薬品添付文書)とされています。

 

服用後の体内での動き(薬物動態、ハロペリドール)

ハロペリドールは、胃ではなく腸から吸収されます。内服の場合、5~6時間後に血液中の濃度がピークに達します。チトクローム酸化酵素P450のCYP2D6、CYP3A4による代謝を受け、主に腎臓から尿へ、一部は胆汁から糞便中に排出されます。50~80時間程度の長時間を経て半減します。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME