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セロトニン・ドーパミン遮断薬

セロトニン・ドーパミン遮断薬(serotonin dopamine antagonist:SDA)は、比較的新しい第2世代抗精神病薬に分類されます。ドーパミン受容体を遮断することで、脳内ドーパミンの過剰状態を正常化し、幻覚や妄想を抑制します。この点は、古典的な抗精神病薬(第1世代抗精神病薬)と同じですが、セロトニン受容体(5-HT2受容体)も遮断する点で、SDAは第1世代と異なっています。これにより、薬剤性パーキンソン症候群が軽減されることが示されています。また、認知機能の改善作用について第1世代抗精神病薬よりも優れていることが報告されています。

 

以下のお薬が日本で処方可能です。

 

リスペリドン内服(リスパダール

パリペリドン(インヴェガ

ペロスピロン(ルーラン

ブロナンセリン(ロナセン

 

※ (  )内は商品名です。クリックすると医療用医薬品の添付文書情報が開きます。

 

 

リスペリドン

代表的なSDAです。(詳しくは、他の記事にてご説明いたします。)

 

パリペリドン

リスペリドンの活性代謝物です。2006年にアメリカ、2007年にヨーロッパで統合失調症の治療薬として認可されました。日本では2010年に承認され、「統合失調症」に対して保険適応が認められています。

リスペリドン同様、ドーパミン受容体とセロトニン2A受容体を阻害することで、幻覚や妄想などの症状を軽減します。日本では、統合失調症に対して保険適応が認められており、インヴェガ錠の薬剤名(商品名)で処方されています。インヴェガ錠は有効成分の放出を制御する工夫が施されているため、内服する際に割ったり砕いたりしてはいけません。1日1回朝食後に正しく服用することで、血液中の濃度を長時間にわたり安定させることができます。

 禁忌は、「昏睡状態の患者」「バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者」「アドレナリンを投与中の患者(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除く)」「本剤の成分及びリスペリドンに対し過敏症の既往歴のある患者」「中等度から重度の腎機能障害患者(クレアチニン・クリアランス50mL/分未満)」であり、使用できません。

 

作用メカニズム

リスペリドンと同様、ドーパミン受容体D2受容体とセロトニン2受容体(5-HT2A受容体)を阻害します。それぞれの受容体との結合のしやすさ(5-HT2A/D2結合比)などリスペリドンと異なる点はありますが、ドーパミン過剰により生じる幻覚や妄想はしっかり抑えつつ、薬剤性パーキンソン症候群などのリスクが第一世代抗精神病薬(ハロペリドールやスルピリドなど)よりも低いことに変わりありません。また、α2A受容体への親和性が強く、大脳前頭前野のノルアドレナリンを増加させる可能性があります。前頭前野は、思考・意思疎通・感情コントロール・記憶・集中・意欲などをつかさどる重要な部位ですので、認知機能全般の改善も期待されます。

 

欧米での使用状況

 

統合失調症

日本同様、欧米でも治療薬として認可されています。6週間の多施設研究(二重盲検、プラセボ対照試験)において、PANSS(陽性・陰性症状尺度)のスコアが改善したことで、統合失調症に対する治療効果が確認されました。長期試験(6週間の治療後に8週間の追加期間を設けた臨床試験)でも、再発予防効果が示されています。

 

統合失調感情障害

イギリスやアメリカで使用が認められています。パリペリドン単剤、抗うつ薬や気分安定薬との併用、いずれの場合も治療薬として用いられます。

 統合失調感情障害(精神病症状もしくは躁症状の急性期)についての臨床試験では、高用量(1日9~12mg)ならば、プラセボよりもPANSSの改善度が優れていたものの、低用量(1日3~6mg)ではプラセボとの差がみられなかったとするデータが示されています。

 

 

主な副作用(インヴェガ錠)

5%以上で認められる副作用は、血中プロラクチン増加(35%)、錐体外路症状、統合失調症の悪化、不眠症、便秘、体重増加、トリグリセリド増加、CK増加などです。

 

妊婦・産婦・授乳婦への投与

医療用医薬品添付文書には、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること」と記されています。なお、オーストラリア分類ではリスペリドンと同様C、すなわち「奇形は引き起こさないものの、ヒト胎児や新生児に有害な作用を及ぼすか、及ぼすことが疑わしい薬剤。これらの作用は可逆的である場合がある」と記載されています。

 

服用後の体内での動き(薬物動態)

空腹時よりも食後のほうが最高血中濃度やAUC(血中濃度―時間曲線下面積)が高くなります。(AUCは見慣れない指標かと思われますが、「服用したお薬が体内でどの程度しっかり利用されるかの目印のひとつ」とお考えください。)服用後に消化管から吸収され、およそ24時間で最高血中濃度に達し、20~23時間で半減します。

 

 

ペロスピロン

 

日本で合成され2000年に治療薬として承認されたSDAです。日本では、ルーラン、ペロスピロン塩酸塩の名称で処方されており、統合失調症に対して保険適応が認められています。

 

禁忌

「昏睡状態の患者」「バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者」「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」「アドレナリンを投与中の患者(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除く)」では使用できません。

副作用

5%以上でみられる副作用は、パーキンソン症候群(25.6%)、アカシジア(25.4%)、不眠(22.8%)、眠気(14.5%)、ジスキネジア(13.1%)、便秘、悪心・嘔吐、食欲減退、プロラクチン上昇、焦燥、不安、めまい、ふらつき、過度鎮静、脱力倦怠感、口渇、CK上昇です。

 

妊婦・産婦・授乳婦への投与

「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること」と記載されています。

 

服用後の体内での動き(薬物動態)

服用後、1~2時間で最高血中濃度に達します。消失は二相性であり、投与後6時間までは1~3時間、それ以降は5~8時間で半減します。

 

 

ブロナンセリン

 

2008年に治療薬として承認されたSDAです。ロナセン、ブロナンセリンの名称で処方されています。統合失調症に対して保険適応が認められています。

 

禁忌

「昏睡状態の患者」「バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者」「アドレナリンを投与中の患者(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除く)」「アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、ボリコナゾール、ミコナゾール(経口剤、口腔用剤、注射剤)、フルコナゾール、ホスフルコナゾール)、HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビル、ロピナビル・リトナビル配合剤、ネルフィナビル、ダルナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル)、コビシスタットを含む製剤を投与中の患者」「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」では使用できません。

副作用(ロナセン錠)

5%以上でみられる副作用は、パーキンソン症候群(35.0%)、アカシジア(24.1%)、不眠(22.4%)、プロラクチン上昇(19.6%)、ジスキネジア(14.0%)、眠気(11.8%)、不安・焦燥感・易刺激性(11.2%)、便秘(10.1%)、食欲不振、悪心、めまい・ふらつき、頭重・頭痛、興奮、倦怠感、口渇、脱力感です。

 

妊婦・産婦・授乳婦への投与

「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること」と記載されています。

 

服用後の体内での動き(薬物動態)

最高血中濃度に達するまで2時間を要し、68時間程度で半減します。(1回2mg、1日2回 朝・夕食後、10日間反復経口投与のデータ)

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