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ミルナシプラン

ミルナシプランとは?

SNRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の一種であり、日本では2000年以降に用いられています。個人的には、「マイルドなSNRI」という印象を持っています。

日本ではトレドミン、ミルナシプラン塩酸塩の名称で処方されています。

 

保険適応(日本)

「うつ病・うつ状態」の治療に対する使用が認められています。

→添付文書(トレドミン

※ (  )内は商品名です。クリックすると添付文書が開きます。

 

禁忌

・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

・モノアミン酸化酵素阻害剤を投与中あるいは投与中止後2週間以内の患者

・尿閉(前立腺疾患等)のある患者

 

歴史

ミルナシプランは、フランスのピエールファーブル社にて開発されたSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)であり、フランスでは1997年に発売されました。2000年に日本でも治療薬として用いられるようになり、現在は、トレドミン、ミルナシプラン塩酸塩錠の薬剤名で処方されています。三環系抗うつ薬と異なり、α1受容体やH1受容体に対して働きかけず、心毒性(心臓に対する悪影響)も持たないことなど、安全性の高さが特徴です。

 

作用メカニズム

2021年現在、日本にはSNRIは3種類あり、ミルナシプランもその一つです。脳内の神経細胞表面にある回収システム(セロトニントランスポーターやノルアドレナリントランスポーター)の働きを止めることで、細胞周辺のセロトニンやノルアドレナリンを増やします。ミルナシプランは、セロトニンよりも、ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用がやや優位であることが知られています。副作用の原因となりうるα1受容体遮断作用・ヒスタミン受容体遮断作用(抗H1作用)を持たないため、それに伴う副作用(起立性低血圧・眠気など)も少ないと考えられています。このあたりは、同じSNRIであるベンラファキシンやデュロキセチンに近い性質を持ちます。

 

海外における研究報告および治療薬としての使用

日本では「うつ病・うつ状態」に対して保険適応が認められていますが、アメリカでは、線維筋痛症に伴う慢性疼痛の治療薬として認可されています。

うつ病

多くのプラセボ対照試験が行われていて、1日50mg以上、2回服用にて治療効果が確認されています。三環系抗うつ薬であるアミトリプチリンやイミプラミンと比較した場合では、同等の効果がみられたとの報告があります。重症うつ病での調査研究では、治療反応率はミルナシプラン69%、SSRIであるフルボキサミンで46%であったとするデータも存在しており、他の研究者も、改善した人の割合がミルナシプランで多かったと発表しています。(ミルナシプラン77%、フルボキサミン60%)。ただ、1日1回投与では、SSRIであるフルオキセチン(日本未承認)との差が見られなかったとの調査もありデータの解釈には注意が必要です。

 双極性感情障害のうつ状態に対して抗うつ薬を用いるのは好ましくない、との意見が一般的です。その一方、ミルナシプランによって躁転する割合(躁転率)はあまり高くない(1.4%)との報告もあります。この数値は、三環系抗うつ薬(9.2%)、SSRIのパロキセチン(8.8%)、フルボキサミン(4.9%)に比べて低く、状況によっては治療選択肢になりうるかもしれません。

 1年以上服用した場合の再発率について、プラセボで23%、ミルナシプランで16%であったとする調査データがあります。およそ7%の差ではありますが、統計的に意味のある違いであることが確かめられています。再発予防のため、改善後もしばらくは服薬を継続したほうが安全であることに疑いはなさそうです。

線維筋痛症にともなう慢性疼痛

日本では保険適応が認められていませんが、海外での治療への応用は、むしろこちらのほうが主かもしれません。2007年12月にアメリカ食品医薬品局(FDA)に治療薬として申請され、治療薬として認可されています。

 

主な副作用(日本)

頻度が5%以上の副作用は、悪心、嘔吐、便秘です。

 

副作用・安全性(海外)

抗コリン作用は三環系抗うつ薬であるイミプラミンの半分程度であると報告されており、全般に副作用が少ないことが知られていますが、アメリカで行われた臨床試験において、5%以上でみられた副作用があります。たとえば、嘔気(37%)、頭痛(18%)、便秘(16%)、不眠(12%)、ほてり(12%)、めまい(10%)、発汗亢進(9%)、嘔吐(7%)、頻脈(6%)、上気道感染症(6%)、口渇(5%)、高血圧(5%)などです。

 

妊婦・産婦・授乳婦への投与

添付文書には、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること」と記載されています。オーストラリア分類ではB3、すなわち「限られた数の妊婦と出産可能年齢の女性に服用されており、ヒト胎児の奇形増加や、ヒト胎児に対する直接的および間接的な有害作用がみられない薬剤。動物研究では、胎児の損傷が増加することが示されているが、ヒトにも当てはまるどうかは不確かである」と説明されています。

 

服用後の体内での動き(薬物動態)

服用後、速やかに吸収され、4時間以内に最高血中濃度に達します。血液中の濃度は変動しながら徐々に上がってゆきますが、定常状態に達するには数日を要します。排出には腎臓と肝臓がどちらも関与しており、血液中の半減期はおおむね8時間程度であることもわかっています。ミルナシプランは、未変化体もしくはグルクロン酸抱合体として尿に排泄されます。血液中のタンパク質とはあまり結合しませんので、仮に血液中のタンパク質が変動するような状況(肝臓や腎臓の異常など様々な要因)があっても、ミルナシプランの血中濃度は影響を受けにくいといえます。

 

他のお薬との相互作用

血液中のタンパク質との結合率が低く、肝臓の薬物代謝酵素であるP450で代謝されないため、薬物相互作用は少ないと考えられています。ただし、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAO阻害薬)と併用すると重大な副作用が生じる可能性があり、禁忌とされています。

 

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