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第一世代抗精神病薬(フェノチアジン系)

幻覚・妄想・興奮を抑える作用を持つお薬です。代表的なフェノチアジン系抗精神病薬であるクロルプロマジンは現在も様々な目的で使われています。抗精神病薬全体の中では、便秘、口の渇き、眠気、起立性低血圧(立ちくらみ)などの副作用がみられやすく、その点は注意が必要です。

 

日本で使用可能なフェノチアジン系抗精神病薬は以下のとおりです。

 

クロルプロマジン(コントミン、ウインタミン、クロルプロマジン塩酸塩

レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン、レボメプロマジン

ペルフェナジン(ピーゼットシー、トリラホン

フルフェナジン内服(フルメジン糖衣錠

フルフェナジン注射(フルデカシン筋注

プロクロルペラジン(ノバミン

プロペリシアジン(ニューレプチル

 

※ (  )内は商品名です。クリックすると医療用医薬品の添付文書情報が開きます。

 

保険適応(日本)

主に統合失調症に対して保険適応が認められていますが、躁病、神経症における不安・緊張・抑うつ、うつ病における不安・緊張、悪心・嘔吐、破傷風に伴う痙攣、催眠・鎮静・鎮痛薬の効力増強、メニエール症候群などに適応が認められている薬剤もあり、対象疾患は多岐にわたります。抗精神病薬の正しい使い分けにはかなりの経験が求められますので、薬物療法に精通した精神科医にご相談ください。

 

禁忌

昏睡状態、循環虚脱状態、中枢神経系抑制薬の強い影響下にある場合、フェノチアジン系への過敏症などが禁忌です。アドレナリン(ボスミン)はアナフィラキシーの救急治療を除いて併用禁忌です。なお、フルデカシン(フルフェナジン持続効果注射剤)ではやや異なります。詳しくは、それぞれのお薬の添付文書をご参照ください。

 

歴史

1952年に登場したクロルプロマジンは、精神科薬物療法に大きな変化をもたらしました。フランスの病院にて躁状態の治療に用いられ、目覚ましい効果をあげたことが始まりでした。その後、クロルプロマジンはカナダでも使用され、統合失調症の入院患者のほとんどが4~5週で改善したとの報告がなされました。日本でも1955年に承認。1960年にアメリカで行われた大規模共同研究でも効果が確認されたことで、治療薬としての地位が確立されました。

 

作用メカニズム

中脳辺縁系のドーパミン受容体(D2受容体)を阻害して幻覚・妄想を抑える点は、他の第一世代抗精神病薬と共通していますが、α1受容体阻害作用、抗コリン作用、抗ヒスタミン作用は、抗精神病薬の中ではやや強めの部類に属します。α1阻害作用は、起立性低血圧(立ちくらみ)、抗コリン作用は便秘や口渇、抗ヒスタミン作用は眠気の副作用につながるため、使用時には注意が必要です。中脳皮質系のドーパミン活性を抑制することで認知面の副作用が生じる点は、フェノチアジン系にとどまらず、第一世代抗精神病薬の課題といえます。これは統合失調症の陰性症状(自閉・無為・感情鈍麻)と見分けがつきにくいため、注意が必要です。

 

 

海外における治療薬としての使用(クロルプロマジン)

 

アメリカ

・統合失調症、精神病性障害

・吐き気と嘔吐

・術前の不安

・術中の鎮静

・難治性のしゃっくり

・急性間欠性ポルフィリン症

・片頭痛(適応外使用)

 

イギリス

・統合失調症、精神病性障害

・躁病および軽躁病

・不安神経症

・精神運動性激越

・興奮、暴力的または危険な衝動的行為

・難治性のしゃっくり。

・吐き気と嘔吐(他の薬が効かなかったり、入手できない場合)。

・自閉症

 

主な副作用(クロルプロマジン、国内)

文献からの集計で5%以上の頻度でみられる副作用は、錐体外路症状(40%)、眠気(27%)、口渇(27%)、鼻閉(20%)、頻脈・心悸亢進(14%)、血圧低下(13%)、発赤発疹(11%)、便秘(9%)、体重増加(8%)、局所痛(7%)、発熱(5%)、反射減弱(5%)です。

添付文書において「5%以上または頻度不明」とされている副作用は、血圧降下、頻脈、不整脈,心疾患悪化、白血球減少症,顆粒球減少症,血小板減少性紫斑病、食欲亢進,食欲不振,舌苔,悪心・嘔吐,下痢,便秘、パーキンソン症候群(手指振戦,筋強剛,流涎等),ジスキネジア(口周部,四肢等の不随意運動等),ジストニア(眼球上転,眼瞼痙攣,舌突出,痙性斜頸,頸後屈,体幹側屈,後弓反張等),アカシジア(静坐不能)、縮瞳,眼内圧亢進,視覚障害、錯乱,不眠,眩暈,頭痛,不安,興奮,易刺激,痙攣、過敏症状,光線過敏症、口渇,鼻閉,倦怠感,発熱,浮腫,尿閉,無尿,頻尿,尿失禁,皮膚の色素沈着など、多岐にわたります。この中には、稀なものも含まれますが、念のため、注意が必要です。

 

副作用(クロルプロマジン、英国のデータ)

10%以上で見られた副作用は、錐体外路症状(急性のジストニア、筋強剛、振戦、無動、アカシジア、眼球上転)、ジスキネジア、遅発性ジスキネジア、眠気、口渇、便秘、体重増加、鎮静でした。

 

妊婦・産婦・授乳婦への投与(クロルプロマジン)

添付文書には、「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい」「授乳中の婦人には投与しないことが望ましい」と記載されています。なお、オーストラリア分類はD、すなわち「ヒト胎児の奇形や不可逆的な損傷を増加させる可能性がある薬剤。詳細については付随する文書を参考にすべきである」とされています。

 

なお、以下の薬剤のオーストラリア分類はC、すなわち「奇形は引き起こさないものの、ヒト胎児や新生児に有害な作用を及ぼすか、及ぼすことが疑わしい薬剤。これらの作用は可逆的である場合がある」と説明されています。

 

 ペルフェナジン

 プロクロルペラジン

 フルフェナジン内服(※ただし、フルフェナジン注射は妊婦に禁忌)

 

服用後の体内での動き(薬物動態、クロルプロマジン)

クロルプロマジンは、消化管から容易に吸収されます。経口および筋肉注射が可能です。筋肉注射の場合は、経口摂取のおよそ4倍ほどの血中濃度となります。経口摂取ならば1~4時間後、筋肉注射ならば30分から1時間後に、血液中の濃度がピークに達します。肝臓で代謝され、胆汁から尿中・糞便に排泄されます。

 

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