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セルトラリン

セルトラリンは、選択的セロトニン再取り込み薬(SSRI)です。脳内のセロトニン活性を高めることで、気分の落ち込みや不安などを軽減します。日本では、ジェイゾロフト、セルトラリンなどの薬剤名(商品名)で知られています。

 

 

保険適応(日本)

「うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害」に対して認められています。

→添付文書(ジェイゾロフト

 

禁忌(日本)

・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

・モノアミン酸化酵素阻害剤を投与中あるいは投与中止後14日間以内の患者

・ピモジドを投与中の患者

 

作用メカニズム

神経終末のセロトニントランスポーター(セロトニンを細胞内へ回収する運搬装置)の働きを阻害することで、細胞外のセロトニン濃度を高めるお薬です。三環系抗うつ薬とは違い、抗ヒスタミン作用(抗H1作用)、抗コリン作用(口渇、便秘、排尿障害などを引き起こす)はほとんどありませんので、それに関連する副作用も少なめです。抗α1作用(立ちくらみの原因となる作用)は、他のSSRIよりは強めですが、三環系抗うつ薬よりは明らかに弱く、セルトラリンで起立性低血圧が起こる頻度は1%未満に過ぎません。

 SSRIに限らず、抗うつ薬の作用メカニズムは完全には解明されていません。セロトニン濃度が高まった結果、セロトニン神経系の活動にブレーキを掛けるシステム(自己受容体)を徐々に鈍くする(脱感作する)結果、抗うつ効果が発揮される、という説もありますが、あくまでも一つの仮説に過ぎません。このあたりは少し難しいお話になりますので、あらためて別の記事でご紹介させていただきます。

 

海外における研究報告および治療薬としての使用

諸外国では、「うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害」以外にも治療薬として認められている疾患があります。たとえばアメリカでは、強迫性障害、社会不安障害、月経前不快気分障害(PMDD)の治療にも使用されています。

 

うつ病

海外においてもうつ病に対する治療薬として用いられており、プラセボ(偽薬)や他の抗うつ薬との効果比較が複数のグループによって行われています。プラセボ(偽薬)よりも改善率が高く、かつ、他の抗うつ薬と同等の効果を持つとする報告が目立ちます。性別では、女性の方がやや改善率が高く、特に閉経前の女性において治療反応性が優れていたとの研究もあります。若年成人や高齢者においても効果が確かめられており、三環系抗うつ薬と同様の治療効果が得られたとする報告もあります。再発予防効果に調査では、改善後の約11ヶ月間、プラセボ(偽薬)を服用した患者さんの46%に再発が見られたのに対して、セルトラリンを服用した患者さんの再発は13%に留まっています。改善した後も、しばらくは服薬を継続したほうがよさそうです。

 

パニック障害

日本同様、米国においても治療薬として認可されています。主にプラセボとの比較において、セルトラリンが優れていたとする研究が複数存在します。

 

強迫性障害(OCD)

日本では保険適応が認められていませんが、海外の調査研究では、成人の強迫性障害に対してセルトラリンが有効であることが示されており、たとえばアメリカでは治療薬として認可されています。また、小児のOCD治療薬として使用を認めている国もあります。

 

外傷後ストレス障害(PTSD)

アメリカでは治療薬として認可されています。急性期、長期治療、再発予防などさまざまな状況での試験において有効性が確認されており、典型的な症状であるフラッシュバックなどの侵入症状、回避、過覚醒などが12週間程度のセルトラリン服用にて軽減したことが報告されています。また、比較的短期の治療(12週)で効果が認められなかった場合でも、長期治療(13週~36週)を行うことで、治療効果が得られたとする臨床試験もあります。再発予防効果についても調べられており、改善後28週間の服用にてセルトラリンとプラセボの比較を行ったところ、セルトラリン群では約5%しか再発しなかったのに対し、プラセボ群では26%で再発してしまった、との報告があります。

 

月経前不快気分障害(PMDD; premenstrual dysphoric disorder)

PMDDは、月経前に精神不安や情緒不安定が出現し、月経が始まると症状が軽減することを繰り返す疾患です。女性の約2~6%にみられます。日本では保険適応が認められていませんが、アメリカではSSRIであるセルトラリンとパロキセチン徐放錠が治療薬として認められています。継続服用ではなく、黄体期など限定した期間のみ服用することでも症状が軽くなった(セルトラリン群で3割、プラセボ群で1割の症状軽減)とする報告もあり、注目に値すると思います。

 

その他

統合失調症におけるうつ症状、小児の社会不安障害、全般性不安障害、発達障害、攻撃的行動、パーソナリティー障害、摂食障害、男性の顔面紅潮などにセルトラリンが奏効したとの報告もあります。

 

主な副作用(国内)

1%以上でみられるものとして、悪心・嘔吐(20%)、傾眠(15%)、睡眠障害、錯乱状態、頭痛、浮動性めまい、振戦、感覚減退、動悸、肝機能障害、口渇、下痢、便秘、腹部不快感、腹痛、腹部膨満、消化不良、食欲不振、発疹、倦怠感、多汗(発汗、寝汗等)があります。

 

副作用(海外)

アメリカの販売前調査では、嘔気(27%)、下痢・軟便(21%)、不眠(22%)、傾眠(14%)、頭痛(26%)、口渇(15%)、性機能障害(14%)、性欲減退(6%)などが報告されています。1%以上でみられる副作用として、動悸、胸痛、食欲亢進、背部痛、脱力、倦怠などを認め、稀ではあるものの、SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)や低ナトリウム血症、アカシジア(静座不能症)、けいれんなども報告されています。また、急激に中止した場合、離脱症状(しびれなどの知覚異常、頭痛、めまい、不眠など)が4%前後でみられたとの調査結果もあります。自己判断での急激な断薬は再発リスクを高めるだけでなく、離脱症状をひきおこすことがあります。医師の指示に従い、正しい服薬を心がけましょう。

 

妊婦・産婦・授乳婦への投与

添付文書には、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること」と記載されています。なお、オーストラリア分類はC、すなわち「奇形は引き起こさないものの、ヒト胎児や新生児に有害な作用を及ぼすか、及ぼすことが疑わしい薬剤。これらの作用は可逆的である場合がある」とされています。

 

服用後の体内での動き(薬物動態)

消化管で徐々に吸収され、服用後7時間前後で最高濃度に達します。食事と一緒に服用すると若干ですが、最高濃度に達するまでの時間が短くなります。血液中の半減期は30時間前後であり、服用を7日間継続すると定常状態に達します。肝臓で代謝されてdesmethylsertraline(デスメチルセルトラリン)に変化しますが、この変化物はセルトラリンの10%の活性しか持ちません。また、セルトラリンはCYP 2C9、3A4、2C19、2D6など多種類の酵素で代謝されるため、単独のCYPを阻害するお薬と併用しても、血中濃度は影響を受けにくいようです。腎機能障害はセルトラリンの代謝に及ぼす影響はあまり大きくありませんが、肝機能障害が重篤となれば、やはり血中濃度が上がりやすくなるため注意が必要です。

 

薬物代謝酵素(チトクローム酸化酵素)への影響

CYP2D6をある程度阻害します。2D6で代謝されるお薬と併用した場合、そのお薬の血中濃度が上昇することがあります。心配な方は、主治医の先生にご相談ください。

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